食べ物を詰まらせる事故が急増、注意点は?

子どもが保育施設などで食べ物をのどに詰まらせる事故を未然に防ぐため、こども家庭庁は新たなガイドラインを発表しました。
この手引きでは、食材を扱う際の注意点などが詳しくまとめられています。
ガイドラインの作成には、過去に保育中の事故で子どもを亡くしたご遺族も参加しました。
「正しい情報をできるだけ多くの人に届けたい」という思いから、イラストや動画を取り入れ、誰にでも理解しやすい内容となるよう工夫されています。
(※2025年8月26日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

誤嚥事故を防ぐために食材のリスクをわかりやすく整理

こども家庭庁が公表したガイドラインでは、保育園で提供される給食やおやつにおいて注意すべき食材を、A4サイズの資料1枚にまとめています。
飲み込みづらい、粘り気が強いなどのリスクごとに分類し、イラストを用いて視覚的に理解しやすく工夫されています。
調理法を工夫することでリスクを軽減できる食材については、適した切り方や代替となる食材も併せて紹介しています。
また、子どもの発達段階に応じて配慮が必要な食品は「調理を工夫する食材」として別に整理されました。
たとえば、おやつとしてよく提供されるリンゴについては、前歯が8本生えそろい、奥歯が出始める離乳の完了期(おおよそ1歳?1歳半)までは、生のままやすりおろしただけの状態では与えず、やわらかくなるまで加熱するよう推奨されています。
さらに、加熱の目安がわかる動画へのQRコードも記載されており、保護者や保育者が実践しやすい内容になっています。

食事に関する情報共有の重要性。園と家庭で連携を! 

子どもの食事中の事故を防ぐためには、家庭との連携が欠かせません。
入園前の段階だけでなく、子どもの成長や発達に応じて、離乳食が進むタイミングなどに合わせた情報のやり取りも重要です。
こうした情報交換が必要となる時期について、ガイドラインでは具体的なタイミングをリスト化しています。
このガイドは、こども家庭庁の公募に応じてMS&ADインターリスク総研が実施した調査研究の一環として作成されたもので、同社のウェブサイトから閲覧・ダウンロードが可能です。

悲しみを力に変えて・・・事故を経験した母親の思い

ガイドラインの作成に携わった検討委員のひとり、愛知県碧南市在住の栗並えみさん(46歳)は、2010年に長男の寛也さんを保育園でのおやつの時間中の事故で亡くしました。
当時、寛也さんはわずか1歳5か月でした。
事故後、園は市に対して「十分に見守りを行っていた」と報告していましたが、栗並さんご夫妻が自ら園に通い、保育士一人ひとりから話を聞いた結果、寛也さんのすぐそばにいたはずの職員が事故の直前にその場を離れていたことが明らかになりました。

おやつの内容と対応に潜んでいた危険とは

事故当日に提供されたおやつにも、安全面での課題があったことが明らかになっています。
この日は、人形焼きのような乾燥したカステラと、直径約1.5センチのラムネ菓子が出されていました。
事故から1年後に市が作成した報告書などによると、寛也さんは十分な水分補給がされないまま、唾液を吸収しやすいラムネとカステラを続けて食べていたとされています。
その間、担当の保育士は席を外しており、その隙に食べ物がのどに詰まった可能性が高いとみられています。

命を守る仕組みを作る!母の願いが動かした新たな一歩

「一度起きてしまった事故は、もう元には戻せません。だからこそ、その経験を無駄にせず、今後に役立ててほしいのです」。
栗並えみさんは、2016年に国が進めた保育事故防止のためのガイドライン作成に関わり、それ以来、継続して事故予防に関する取り組みに携わっています。
2020年以降、保育施設での食事中に子どもが命を落とす事故や重体となるケースが続発しました。
これまでのガイドラインにも対策は盛り込まれていましたが、文章量が多く、忙しい保育の現場では十分に活用しづらいという課題があったのです。
そうした中、栗並さんは「食事中の事故防止」に特化した実践的な手引の必要性を訴えました。
この声が届き、こども家庭庁が新たな手引の作成に取り組むこととなりました。

伝わる工夫で命は守れる。「誰もが使える手引書」考案

今年3月に公開された新しい手引では、危険性のある食材を単に列挙するだけではなく、それぞれの食材が持つ特性や、飲み込みのメカニズムについても説明しています。
難しい専門用語は避け、わかりやすい言葉とイラストを用いることで、誰でも理解しやすい内容に仕上げました。
このような工夫の背景には、寛也さんの事故があります。
当時、保育士たちは食品に潜むリスクを十分に認識しておらず、適切な見守りをせずにおやつを提供していたことが事故の要因の一つとされています。
この手引は、調理室や保育室に掲示し、すぐに確認できるよう設計されています。
また、栗並えみさんの提案により、調理後の食材の質感を動画で確認できる仕組みも導入されました。
栗並さんは、「誰も意図的に事故を起こすわけではありません。保育中の事故のリスクを完全になくすことは難しいですが、できる限りその可能性を減らすために、この手引を役立ててもらえたら嬉しいです」と語っています。


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