RSウイルスの母子免疫ワクチンの定期接種、4月から妊婦へ導入
乳幼児が感染すると重篤な肺炎を引き起こす可能性があるRSウイルスに対し、妊婦を対象としたワクチンが4月から原則無料の定期接種として導入される見込みです。
妊婦が定期接種の対象に含まれるのは今回が初めてとなります。
この取り組みによって、どのような効果が期待されているのでしょうか。
(※2026年1月11日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
妊婦接種赤ちゃんを守る-RSウイルス予防の新たな取り組み
RSウイルスは、一般的な風邪の原因となるウイルスの一つであり、ほとんどの子どもが2歳までに一度は感染します。
ただし、生後6カ月未満で感染すると重症化しやすく、無呼吸発作や急性脳症を引き起こすこともあります。
また、後遺症として気管支ぜんそくが残るケースも報告されています。
現時点で乳児に直接接種できるワクチンは存在していません。
そのため、予防策として注目されているのが妊婦へのワクチン接種です。
妊娠中に接種することで母体に抗体が作られ、その抗体が胎児へ移行することで、出生後の感染や重症化を防ぐ効果が期待されます。
この仕組みは「母子免疫ワクチン」と呼ばれています。
対象となるのは妊娠28~36週の妊婦で、接種は1回です。
国内外で実施された臨床試験では、生後3カ月以内の発症予防効果は57.1%、重症化予防は81.8%とされています。
また、生後6カ月以内では発症予防が51.3%、重症化予防が69.4%という結果が示されています。
副反応としては、接種部位の痛みや頭痛、筋肉痛などが確認されています。
一方で、早産の発生率については、ワクチン接種群が5.7%、偽薬群が4.7%とやや高い傾向が見られましたが、統計的に有意な差は認められていません。
日本人に限定したデータでは、むしろ接種群のほうが早産率は低く、厚生労働省も現時点で安全性に大きな懸念はないとしています。
日本大学の川名敬主任教授(産婦人科学)は、「RSウイルスによる入院では人工呼吸器が必要になるケースもあり、軽い風邪と侮ることはできません。
妊娠中のワクチン接種によって、生まれてくる子どもを守る意識が重要です」と指摘しています。
また、出生後の予防策としては、抗体薬を乳児に投与する方法もあります。
現在は心疾患を持つ子どもや早産児など、重症化リスクが高いケースに限り公的医療保険の対象となっています。
この抗体薬についても、将来的に定期接種のような位置づけにできるか検討が進められています。
一方で、ワクチンだけでは十分に防ぎきれない場合もあります。
特に接種から14日以内に出生した場合は、抗体の移行が不十分となる可能性が指摘されています。
そのため、抗体薬との併用による予防体制の整備が重要とされています。
ただし、抗体薬はワクチンに比べて費用が高い点が課題となっています。
日本で望まれる百日せき対策、母子免疫ワクチンの現状と課題
海外では、百日せきの予防を目的とした母子免疫ワクチンの活用が進んでいます。
百日せきは激しい咳が長期間続く感染症で、症状は2~3カ月に及ぶこともあります。
乳幼児向けにはすでに定期接種が実施されており、生後2カ月から1歳半までに計4回の接種が行われます。
今年は日本国内でも感染が広がり、ワクチン接種前の乳児が感染し、命を落とす事例も報告されています。
そのため、生後2カ月を迎えた時点で速やかにワクチンを受けることが重要とされています。
一方、オーストラリアや欧米諸国では、妊娠後期の女性に対して百日せき予防の母子免疫ワクチンの接種が推奨されています。
ただし、これらの地域で使用されているワクチンは、現時点では日本国内で承認されていません。
日本で利用可能な3種混合ワクチン(百日せき・破傷風・ジフテリア)は、妊婦への接種も可能とされています。
国内研究では、妊婦が接種することで胎児へ抗体が移行することが確認されていますが、重症化を防ぐ効果については十分な検証がなされていないのが現状です。
日本大学の川名氏は、
「接種を検討する場合は、必ず主治医と十分に相談することが大切です」
とした上で、
「海外では母子免疫ワクチンが一般的な予防策として位置づけられており、日本でも導入が望まれます」
と述べています。
また、日本産科婦人科学会の公式ウェブサイトでは、母子免疫ワクチンについての詳細な解説が動画とともに公開されています。























