夜間保育の子ども「かわいそう」と言わないで!

夜間に保護者が自宅を空けざるを得ない世帯があります。
そうした状況にある親子を見守り続けてきた夜間保育園を題材にした小説『蒼天のほし』(双葉社)が、5月に刊行されました。
執筆したのは、長年にわたり保育の現場を取材してきた作家・いとうみくさん(55)です。
本作では、夜間保育園を通して浮かび上がる親と子の関係性や、そこに映し出される日本社会の姿が描かれています。
(※2025年9月30日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

夜に灯る居場所が教えてくれる「さまざまな家族のかたち」

『蒼天のほし』は22歳の保育士を主人公に、東京・新宿にある夜間保育園の毎日を描いた作品です。
夜間保育園を題材にした理由は、存在は知っていたものの、「夜だけ子どもを預かる施設」だと誤解していたことに気付いたからです。
実際には、昼間から子どもを受け入れ、そのまま夜まで保育する園が多くありました。
園には朝まで滞在する子どももいれば、21~22時頃に迎えに来る保護者も少なくありません。
親の職業も、官僚、医療関係者、報道関係者など多岐にわたっていました。
東京と福岡にある2つの夜間保育園を取材し、作品を書き上げました。
夜に子どもを預けることに対して、「それは虐待ではないか」という意見があるのも事実です。
しかし現実には、夜間保育を必要とする家庭が確かに存在しています。
物語の中では、広告会社で働く父親のひとり親家庭や、ホステスとして働く母子家庭など、さまざまな家族を描いています。
働かなければ生活が成り立たず、頼れる人もいない状況で、子どもを残して夜に仕事へ向かったり、急な出張に対応したりする親もいます。
子どもを案じながらも、何とか日々を乗り越えているのです。
しかし、それを個人の努力だけに委ねてよいのでしょうか。
すべての子どもが夜を家庭で安心して過ごせる社会であれば、夜間保育園は不要かもしれません。
しかし、現実はそうではありません。2000年に発表された研究では、「夜間保育が子どもの心身に悪影響を与えるという明確な結果は見られない」と報告されています。
取材を通じて感じたのは、夜間保育園で過ごす子どもたちは決して不幸ではないということです。
保育士は一人ひとりの睡眠の様子に目を配り、途中で目を覚ました子を抱きしめたり、背中を優しくたたいたりしています。
そこには、子どもたちの信頼と、専門性を備えた保育士との温かな関係がありました。
夜間保育を必要とする子どもがいる以上、そこに通う子どもたちにも質の高い保育を受ける権利があります。
作品名の「蒼天のほし」とは、明るい場所では見えない星を指します。
夜に親がそばにいない環境に置かれた子どもたちは、日本社会の中で、そのような存在として見過ごされがちではないかと感じました。
作中で印象的だったのは、園長の言葉です。
「子どもの幸せは、子どもだけを見ていても実現しない。親が幸せであってこそ、子どもも幸せになれる」。
福岡市の夜間保育園を取材した際に、この言葉に強く共感しました。
保育雑誌に関わっていた頃、母親が美容院へ行くことを非難する声や、「園に頼りすぎている」という保育関係者の発言を耳にしたことがあります。
その背景には、「子どものためなら親は自分を犠牲にすべきだ」という価値観があるように思います。
それは多くの親に罪悪感を植え付ける、見えない重荷になっています。
疲れ切って帰宅し、思うように動かない子どもについ声を荒らげてしまう。
良くないと分かっていても止められないこともあります。
親に心の余裕がある方が、結果的に子どもにとっても良いのではないでしょうか。
物語には、出版社で働く母親も登場します。連絡帳に丁寧な言葉を並べる、いわゆる「理想的な母親」ですが、やがて限界を迎えます。
「周りはちゃんとできているのに」と漏らす彼女に、園長は「一人で抱えきれないときは、ここに来ればいい」と伝えます。
そして、「親から愛されていると実感できる子どもは幸せなのです」と続けます。
その言葉に、この物語のすべてが集約されていると感じます。

子どもの成長を左右するのは時間帯ではなく家庭の土台

こども家庭庁の調査によると、2024年4月1日時点で、認可を受けた夜間保育園は全国に74園あります。
多くの施設では11時から22時までを基本の開所時間とし、前後に延長保育を実施している場合もあります。
また、認可外の保育施設も各地域に存在しています。
筑波大学の安梅勅江教授(保健学)らは、全国の認可夜間保育園22園を対象に調査を行いました。
この調査では、保護者1949人と、園児2905人について保育専門職が回答し、その結果が2000年に公表されています。
調査から明らかになったのは、子どもの発達に大きく影響していたのは、夜間や深夜といった保育の時間帯や形態そのものではなかったという点です。
むしろ、家庭でどのような育児環境が整えられているか、保護者が子育てに対して自信を持てているか、また周囲から十分な支援を受けられているかといった要素が、子どもの発達と深く関わっていることが示されました。


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